「時代には時代の芸術を、芸術にはその自由を」若々しく意欲的なスローガンを掲げ、19世紀末のウィーン美術界では、アカデミーに代表される旧勢力から離反し、新しい芸術を打ち建てようとする革新的な動きが起こった。画家グスタフ・クリムトを中心に、当時の新進気鋭の画家、デザイナー、建築家らが結集して設立した「ウィーン分離派」の動きである。
爛熟した都市文化の中で、彼らは絵画、彫刻、建築といった従来の優越的なジャンルと、デザイン、工芸、ファッションといった人々の日常生活に密着した実用美術の領域を一つに融合し、近代的な総合芸術の確立を目指した。 彼らは専用の展示館を建て展覧会を開催し、デザイン的にも注目すべき機関誌『ヴェル・サクルム』を発刊。また幾多の展覧会を通じて、国外の様々な芸術も紹介し、ウィーンをさらに魅力的かつ重要な芸術都市にしていった。
本展は、今日まで存続するウィーン分離派の1898年の第1回展覧会から、内部の意見対立を原因とする1905年のクリムトらの脱会を経て、その後オーストリア=ハンガリー帝国が解体する1918年までの、新たな絵画表現を追及した次世代の画家たちの活動に焦点を当て、いわゆる初期ウィーン分離派の活動を本格的に紹介する国内で初めての展覧会である。 内容的には、オーストリア国立工芸美術館(MAK)をはじめ、国内外の美術コレクションの出品協力を得て、絵画・彫刻・工芸・版画・関連資料など約60作家の作品約180点を幅広く紹介する総合的な構成となっている。