《静止した映画》―その技術と美を探る
私たちがある一本の映画と出会う前に、そのきっかけとなる大切な役割を果たすのが宣伝用のスチル(静止)写真です。映画の現場には、映画そのものを創り出すキャメラマンとは別に、スチル写真の撮影者(スチルマン)が存在し、本番撮影と並行して場面の撮影をしています。時間芸術である映画のエッセンスを静止画像によってすくい取り、人々の想像力をかき立てるスチル写真には、独自の感覚とプロフェッショナリズムが求められます。
そのスチル写真に初めて光を当てるこの展覧会「映画より映画的! 日本映画 スチル写真の美学」は、主に日本映画の最盛期に活躍したスチルマンの仕事に注目し、彼らの日本映画への隠れた貢献を明らかにします。スチルの撮影という仕事を紹介するとともに、1951年から16年間「キネマ旬報」誌上で行われた「日本映画スチル・コンテスト」の受賞作、映画作品自体の象徴となった名作スチル、著名な写真家が手がけたスチル、フィルムが失われた戦前の喜劇のスチル、そして編集者・写真家の都築響一氏によるロビーカード(劇場掲示用の印刷スチル)のコレクションなどを展示し、この“もう一つの映画文化”を多角的に取り上げます。