染色家として現在も国内外に幅広いファンを持つ芹沢銈介は、同時に知るひとぞ知る蒐集家でもありました。20代前半から始められたという絵馬の蒐集に端を発し、芹沢の周りには、常に自らが選び、楽しんだ品々がありました。70代からは一段と力がはいり、自身で「もう一つの創造」と称し、制作と同等の位置を与えて情熱を注いでいました。
最晩年、それまでの蒐集品の大半を郷里の静岡市に寄贈しましたが、その数は実に4,500点を数え、時代や国境を超えた様々なジャンルに渡っており、蒐集にかける情熱をまざまざと感じることが出来ます。当館では、これらの貴重な工芸品の数々を、過去20年にわたって様々なテーマごとに展示してきましたが、今回は、芹沢コレクションをよく知る識者の方々のご協力を得て、そのなかから特に名品といわれる品々を厳選してご覧いただきます。
白洲正子が絶賛し自らも愛蔵していた「誰が袖屏風」、自らが愛情を込めて仕立てた「唐草貼り交ぜ屏風」、日本屈指のコレクションといわれる三春人形、他に類を見ないアフリカ・ソンゲ族のマスク、充実した内容を誇る李朝の民画など、いずれもこの20年の間に数回しか展示されなかった貴重な品々が一堂に陳列される得がたい機会になります。この機会に、ぜひ芹沢コレクションの精髄をお楽しみください。