グリフィス・ウェイ氏(アメリカ合衆国・シアトル在住)は、日米両国を行き来しながら長年にわたり国際弁護士として活躍をされてきました。早くから日本美術に興味をもたれたウェイ氏とパトリシア夫人は、とりわけ四季折々の自然の姿を洒脱に表現する今日との近代日本画に特別な関心をいただき、収集が始まりました。
近代化の波があらゆるところに押し寄せた明治維新以降、多くの画家たちは西洋や中国、またわが国の古典などさまざまな美術を研究し、新しい絵画をつくるための思考錯誤をくり返していました。京都画壇の画家たちは、熟練の筆づかいと繊細な色調を操りながら、これらの研究の成果を巧に取り入れ、近代の日本画としてさらに美しく洗練させていくことに成功したのです。
近代の日本画は、西洋ではあまり注目されることのない領域ではありましたが、ウェイ夫妻の卓越した審美眼と深い理解により築きあげられたコレクションは、シアトル美術館やロサンゼルス郡立美術館において展覧会が催され、高い評価を受けるようになりました。
本展は、塩川文麟、森寛斎、富岡鉄斎、幸野楳嶺ら幕末・明治の激動の時代を生き抜いた画家から、竹内栖鳳、上村松園、冨田溪仙、橋本関雪、堂本印象をはじめとする近代の日本画を確立していく大正・昭和の名手たちまで、京都画壇の代表的な38作家による80点を一堂に展覧するものです。このコレクションが日本に里帰りするのは初めてであり、貴重な機会といえます。
さらに、見どころの一つにコレクションのほぼ3分の1を占める都路華香の作品が挙げられます。都路華香(1870-1931)は、冨田溪仙の師であり、京都画壇を代表する画家でありながら、これまでまとまった形で展示されることは多くありませんでした。ウェイ夫妻も魅了されたその斬新で多彩な表現方法は、むしろ現代の感覚にマッチするものであり、近年再び注目をあびています。