どこまでも優しいまなざし、からみつく柔らかな毛並み―透徹した自然観察と詩情の調和した品格ある日本画で、明治から昭和の京都画壇の第一人者とされた木島櫻谷 (このしまおうこく) (一八七七―一九三八)。ことにその動物画は、いまなお私たちをひきつけてやみません。
京都三条室町に生まれ、円山四条派の流れをくむ今尾景年のもとでいち早く才能を開花させた櫻谷は、明治後半から大正には人物画や花鳥画で文展の花形として活躍、続く帝展では審査員を務めるなど多忙の日々を送りました。しかし五〇歳頃からは次第に画壇と距離をとり、郊外の自邸での書物に囲まれた文雅生活のなか、瀟洒な南画風の境地にいたりました。
徹底した写生、卓越した筆技、呉服の町育ちのデザイン感覚、そして生涯保ち続けた文人の精神。そこに醸し出される清潔で華奢な情趣は、京都文化の上澄みとでもいえるでしょうか。本展は各時期の代表作を中心に、公益財団法人櫻谷文庫の未公開資料もあわせ、櫻谷の多彩な画業を振り返るものです。