佐脇 健一(1949年大分県生まれ、東京芸術大学卒業)は、多様な素材やメディアを駆使しながら、風景を生み出す彫刻家です。大学院修了後、一貫して風景彫刻に取り組んできました。その作品は、ブロンズや鉄を精巧に鋳造し、俯瞰的な風景として表現するもので、独自の小宇宙を出現させています。
モチーフは、風化して廃墟となった近代産業遺産や、最先端のテクノロジーです。物質文明に対する深い洞察によって、ものの生成・喪失・生・死といった普遍的命題や、存在の意味、人と自然のかかわりを空間に提示しています。20年以上前に制作した「表相 - 炉心の構造」や「封印」シリーズは、廃墟となって錆びついた原発やプルトニウム貯蔵施設を鉄で鋳造した作品です。今日の原発事故を予見したかのようなそれらの作品は、単なるノスタルジーとしての近代ではなく、「未来の記憶」ともいうべき、未来から過去にさかのぼる想像力の時間軸が込められています。時間や空間というフィールドに、記憶や想像を装填した作品は、見る人のさまざまな感情を呼び起こし、心に深く訴えかけてくるのです。
本展では、大型の新作インスタレーションをはじめ、立体、フォト・ドローイング、映像、ウッドワークなど100余点を紹介し、佐脇健一の時空間を超えた「未来の記憶」をたどる旅へと誘います。