オランダ近代絵画の巨匠フィンセント・ファン・ゴッホ(1853-1890)は伝説のように伝えられる情熱的な性質とその波乱万丈な人生から、私たちはゴッホについて「理想家で頑固な、燃えては消える炎のような激しい性格をもつ天才」とイメージしています。初めからゴッホは天才だったのでしょうか。アムステルダムにあるゴッホ美術館の研究チームは7年にわたり、ゴッホの実像を追い求めてきました。その答えは意外にも空白であった、パリ時代の作品に隠されていました。今日のゴッホ研究は弟テオとの書簡をもとに検証されています。ところがテオと同居していたパリ時代には、その書簡が存在しません。ゴッホのパリ生活は空白となっていました。しかしパリ時代のゴッホは、作品が雄弁に証言してくれていました。作品たちは、ゴッホの挫折と苦渋からの再生を、孤独の中の強靭さを、展覧会会場で語りかけます。そして不思議な日本との関わりを資料は示してくれます。アルルの地での解放された心とむしばむ心によって、やがて訪れる悲劇の序章が、見え隠れする空白のパリの700日をあなた自身の眼で追想してください。ゴッホ美術館のなぞ解きをするかのようなスリリングな展示方法も見どころです。 36点の日本初公開の作品や700日間での変貌をみせる8点の自画像もあなたに新たなゴッホを発見させるでしょう。