咲き誇る花々や瑞々しい果実を四角い画面いっぱいに描きこむ富田有紀子(1958―)。その絵画群は、生命力にあふれ力強く、清らかでエネルギッシュな印象を与えます。
本展はその画業を紹介する美術館では初の展覧会です。
富田は、画家であった祖父・小林猶治郎の影響で高校時代から公募展へ油彩画を出品していました。
80年代には陶やブロンズを素材としたインスタレーション作品を中心に発表しますが、95年ごろからオーソドックスな油彩画の世界に足場を築きます。
1996年には、作品《No.25》が若手平面作家の登竜門のひとつ「VOCA(ヴォーカ)展」で奨励賞を受賞し一躍脚光を浴びます。
象徴的な空間の中から光に満ちた開口部がひらきゆく神秘的な作風は、やがて花や果実に画題を得て、写実的な絵画へとスタイルを変化。
しかし常にその画面には、光あふれる世界の種が芽吹き、ふくらみ、広がっていく神秘の瞬間が焼き付けられているといえるでしょう。
本展は、富田有紀子の油彩画100点余りを一堂に集め、ますます輝きを増していく気鋭の画家のこれまでとこれからに注目する機会となります。
一足早い春の楽園へぜひご来場ください。