(財)常陽藝文センターでは、郷土作家展シリーズ第222回として「蒼の軌跡 浦口雅行展」を開催いたします。陶芸家・浦口雅行さんは東京芸術大学および同大学院で陶芸を研究、栃木県芳賀町を経て平成13年から八郷町(現・石岡市)にアトリエを構えて制作活動を展開しています。
日々進歩を遂げる陶芸のなかで伝統的な陶芸のひとつの代表格でもある青磁(瓷)は、従来完成されたものとして考えられていました。しかし浦口さんはこれまでにいくつもの新しい青瓷を開発、発表してきました。青磁(瓷)釉は長石、珪石をベースに調合されますが、僅かに含まれる鉄分によって明るい青色に発色するものです。「青瓷黒燿砕」「海松(みる)瓷黒燿砕」、などと名付けられた、これら浦口さん独創の青瓷と、青瓷研究のなかから発展的に生まれた「瑠璃燿砕」は、いづれもが青というよりは暗緑色あるいは暗紫色~暗青色を呈する格調高いもので、従来の青瓷の概念を大きく変えるものとなっています。そして全体に発生した細かな貫入によって青瓷に当った光がさまざまな角度に反射し、とくに「瑠璃燿砕」の貫入は微細な気泡とともにあたかも宇宙の星々あるいは星雲を思わせる光景を作り出しています。
これらの青瓷は冷却時の陶土とガラス質(釉)の収縮率の違いを計算し、0.1ミリ単位で陶土と釉薬の厚さを調整して初めて誕生します。この浦口さんの繊細な作業は陶芸における神秘な部分のコントロール可能な範囲を大きく広げる結果となっています。
そして浦口さんの作品世界のもう一つの独創性はそのフォルムにあります。中国の青銅器から発想を得た独特の力強い意匠は、陶芸という従来のいわば則(のり)を超えたとでも言える斬新な工芸世界を創出しています。
また浦口さんは伝統的な明るい発色を呈する青瓷も制作しています。優雅なフォルムに大胆な貫入を施した作品群はもう一つの浦口さんの華麗な青瓷の世界を見せています。
一般に磁土を素地とするものを青磁、陶土を素地とするものを青瓷と表記しています。