北九州出身の画家、田淵安一(1921~)は戦後の最も早い時期、1951年にフランスに渡り、パリさらにはブルターニュ地方を活躍の拠点としながら、広く作品を発表し、国際的に高く評価された作家となっています。
今回の展覧会は、その滞欧が半世紀となることを記念し、風土や自己の文化的背景を強く意識しながら展開してきた画業の全容を紹介しようとするものです。
田淵の芸術は、基本的に表現主義的抽象画の路を進んでいますが、自然の営みや生命力と密接に結び付くことによって、みずみずしい生命感をつねにあふれさせています。
今回の展示では、50年代から80年代までの主要作品約30点にてその足跡を回顧的にたどる他、港町ル・クロワジックに移住した87年から近作までの約50点により最新の成果を紹介します。
あざやかな色彩とやわらかな筆触にとんだ約80点の展示作品は、いずれも〈生命への共感〉をうたいあげることを共通の性格としています。その柔軟な発想と清純な感覚は、時空を越えてユニークであり、現代人の心を大きく開放してくれることでしょう。