戦前から戦後にかけて、ファッションやインテリア、ライフスタイルに至るまで美しさを追求した提案をし、女性たちから圧倒的に支持された中原淳一(1913-1983)。
弱冠19歳で開催した自作のフランス人形展で大きな反響を巻き起こした中原は、それを機に専属挿絵画家となった雑誌『少女の友』で爆発的な人気を得て、一世を風靡します。戦後、『それいゆ』『ひまわり』といった雑誌を次々に創刊。豊かで美しい暮らしを送るためのちょっとした工夫や技術、内面を磨く教養が、読んでいるうちに自然に身に付くようにと作られたこれらの雑誌を通じ、中原は女性たちのカリスマ的存在となってゆきました。その活動は多岐にわたるもので、編集長としてはもちろんのこと、イラストレーター、ファッションデザイナー、ヘアメイクアーティスト、スタイリスト、インテリアデザイナー、プロデューサー、人形作家、作詞家といった多彩な分野において天才的な才能を発揮し、いずれの分野でも現代へとつながる先駆的な役割を果たしたといえるでしょう。
さまざまな挿絵、文章を通じて中原が一貫して訴えていたのは、女性に内面的にも外見的にも美しくあって欲しいということでした。それは女性の幸せ、人々の幸せを願っていたからにほかなりません。「人生はスカートの長さではないのです」と語っているように、中原イズムはいつの時代も変わらない普遍性を内包し、私たちを魅了し続けています。
生誕100周年を記念する本展は、初公開となる『ひまわり』表紙原画3点をはじめとした雑誌の表紙原画、スタイル画、人形、雑誌の付録など約400点を展覧する大回顧展となります。また中原が描いたシンデレラのドレスや、「少女の部屋」をテーマに彼が提案した三畳間を再現。現代も色褪せない中原独特の美学に迫ります。