1979年、福武書店(現ベネッセホールディングス)創業社長・福武哲彦は国吉康雄の描いた女性像に出会い、購入を決意します。その後、当社では、数々の国吉作品と向き合ううち、アートがどれほど大きな発信力をもつか、一人ひとりに強く問いかけるものであるかを実感し、それがベネッセアートサイト直島の構想へと結びついてきました。
今、直島は、穏やかな瀬戸内海の風景の中で現代アートに触れることで、訪れる方一人ひとりが今の時代や社会を考え、自らを見つめる場所となっています。
明治期の岡山に生まれ、17歳で単身米国に渡ったのち絵の才能に目覚め、20世紀前半のアメリカを代表する画家となった国吉康雄の作品は、直島においては一見、異質なものと思われるかもしれません。しかし、その生涯を通じて変化し続けていった作品群は、国吉が時代や社会情勢に流されることなく、自らがどう生きるかを真摯に考え続けていたことを示しています。
本展では、国吉康雄を過去に成功した画家としてではなく、すぐれて現代的な問題を投げかける存在としてご覧いただければと思います。そして、直島で国吉康雄作品に出会う方が、今の時代を考え、その中で自分はどのように生きるかを考えていただければと思います。