本年は、小磯良平(1903-1988)の生誕110年にあたります。本展は、全国の美術館、所蔵家から代表的な油彩画をはじめ、素描、版画、挿絵原画など総点数 約120点を一堂に集め、その初期から晩年までの画業の足跡をたどるものです。
東京美術学校(現・東京藝術大学)西洋画科の在学中の1925年、第6回帝展で初入選を果たした小磯は、翌年第7回帝展に出品の《T嬢の像》で早くも特選の栄に浴し、20代の頃から広く注目を集めました。
1927年、東京美術学校を首席で卒業した後は、フランスに渡り、ルーヴル美術館をはじめ、ヨーロッパ各地の美術館を積極的に巡って優れた西洋絵画を学び、演劇や音楽鑑賞をするなど、欧州文化を肌で吸収しました。帰国後は、清楚な女性像に代表される人物画を数多く手がけ、とくに1941年、第4回新文展に出品した《斉唱》は高い評価を受け、小磯の代表作となりました。
終戦後は、母校である東京藝術大学において後進の育成につとめ、藝大退官後は東京・迎賓館赤坂離宮のための壁画を制作するなど群像表現における傑作を数多く残しました。また、版画や挿絵原画にも積極的に取り組み、西洋絵画を範とした穏やかで洗練された美しさを追求しました。
本展では、「I東京美術学校時代 1922-27」、「Ⅱ渡欧期 1928-30」、「Ⅲ神戸:山本通のアトリエから 1931-45」、「Ⅳ多様化する制作 1945-60年代」、「Ⅴ写実的表現への回帰 1970-88」そして「Ⅵ素描、Ⅶ版画、Ⅷ挿絵原画、Ⅸ資料」に分け、小磯芸術の世界をご覧いただくものです。