土器などの陶器の生産は、東南アジアでも各地でおこなわれていましたが、釉薬のかかった「施釉陶」は、中国と地理的にも近いインドシナ半島のベトナム・タイ・カンボジアの各地で生産され、ベトナムやタイでは現在もその伝統を継承しています。また、ベトナムやタイの陶器は、東南アジア地域をはじめとした地域に輸出され、遠く東アジアの日本にも渡来し、茶の湯の道具として用いられたものもあります。同じように、インドネシアの染織品のなかにも茶湯の道具の袋としてとりいれられたものもあったようで、陶芸・染織の分野だけに限っても、東南アジアの工芸は、わが国の文化にもふかく根をおろしているといえます。
本展におきましては、こうした東南アジア美術の魅力に触れていただき、広大な範囲に展開された交易にも想いをはせていただければ幸いです。