19世紀末パリ―。“美しき師弟愛”の物語。
象徴主義の巨匠ギュスターヴ・モロー(1826-1898)。国立美術学校の名教授としてマティスやマルケなど多くの画家を育てたモローが最も愛した生徒がいました。後に20世紀最大の宗教画家と呼ばれるジョルジュ・ルオー(1871-1958)です。モローはルオーの才能を見抜き、熱心に芸術上の助言を与えました。ルオーはマティエールや内的ヴィジョンへの感覚を師から受け継ぎ、やがて自身の作品の中で我がものとしていきます。
「我が子ルオー」「偉大なる父」と彼らの往復書簡の中で呼び合う二人の間には、師弟を超えた特別な絆がありました。モローは遺言によりルオーをモロー美術館初代館長に任命し、自分亡き後も愛弟子を導き続けます。ルオーはモローへの感謝を生涯忘れることはなく、精神的な父としてのその存在は彼の芸術と人生に深い影響を及ぼしたのです。
汐留ミュージアム開館10周年を記念する本展は、ギュスターヴ・モロー美術館館長監修により企画され、パリに先駆けて開催される世界初の二人展です。モロー晩年の未公開作品やルオーの美術学校時代の作品など日本初公開を多く含む作品がフランスからやってきます。油彩画、素描、書簡など約70点を通して、モローとルオーの芸術と心の交流の軌跡をたどる貴重な展覧会です。