一目見ると忘れがたい印象を残す子どもや動物たち。奈良美智(なら・よしとも)が作り出す作品は、時に挑戦的であり、またある時には瞑想しているような憂いを帯びた、多彩な表情を見せてくれます。そこには、可愛らしさの奥底に秘められた強い意思や、言葉にできない感情といった、相反する営みが共存する人間の奥深さが表れ、見る者の想像力をかきたてる魅力を秘めています。
絵画やドローイングをはじめ、大規模なインスタレーションなど、多様な作品を通じて広く世界中の人々を魅了してきた奈良美智は、今、再び創作活動の原点に立ち返り、文字通り自らの手によって生み出される指の跡もあらわな彫刻など、新たな作品世界を切りひらこうとしています。
タイトル「君や 僕に ちょっと似ている」は、ビートルズの「Nowhereman」の歌詞に登場するフレーズです。作家からのメッセージに記されているように、それは作家と作品の関係、さらに観客と作品の関係性を示しています。
様々なレベルにおいて絶え間ない変化を続ける世の中で、人々の共感を呼び、長く残り、語り継がれるもの。それは「君」や「僕」に「ちょっと似ている」、普遍性を持つ存在であることでしょう。これまで作家の分身として送り出されてきた作品は、より自立した存在として私たちと向かい合い、永続性のある共感関係を結んでくれるに違いありません。
本展は、作家にとって初の挑戦となる大型のブロンズ彫刻をはじめ、絵画やドローイングなどの新作により構成されます。