開国か攘夷か―
諸外国の圧力に揺れ動いていた幕末。江戸幕府第十四代将軍徳川家茂(いえもち)(1846~1866)は、文久3年(1863)2月から6月にかけて朝廷へ参内するため上洛します。徳川将軍家の上洛は、三代将軍家光以降、約230年ぶりでした。3000人にのぼる武装行列は、幕末の世を賑わせた一大イベントとして大きな注目を集めました。
この歴史的事件は、三代歌川豊国(1736~1864)を筆頭に幕末浮世絵界最大派閥であった歌川派の絵師16名により、将軍の入京後間もない文久3年4月から7月に描かれました。それが、総数160枚の大部な揃物、「東海道名所風景」です。ほとんどの図に武装行列や武士を描くことから、通称「御上洛東海道」と呼ばれました。風景版画の体裁をとりながら、報道性をも兼ね備えており、メディアとして重要な役割を果たしたことがわかります。
2013年は、将軍の御上洛より150年の節目を迎えます。本展は3期に分けて将軍の旅した東海道、「御上洛東海道」を紹介するまたとない機会です。