今の鏡は暮らしになくてはならない生活必需品ですが、現代のようなガラス製の鏡は日本では明治時代以降に作られるようになったものであり、江戸時代までの鏡は金属製でした。さらに歴史をさかのぼると、鏡は姿見に使う生活用品ではなく、祭りの道具や宝器であった時代がありました。
日本列島における鏡の歴史は、弥生時代に朝鮮半島や中国からもたらされた青銅製の鏡に始まります。鏡は中国との交流のあかしという政治的な意味を持った宝器であり、その後も古墳の副葬品や寺社への奉納品として、大切に扱われる時代が長く続きました。
本展では、当館の所蔵品から古代日本の鏡と、それぞれの鏡と同じ時代の資料を選びました。歴史的な意味合いに加えて、鏡に描き出された紋様の美しさもお楽しみいただけることと思います。