芸術もまた、科学と公衆のインターフェイスとして際立った役割を演ずる(アルス・エレクトロニカ'99)
「脳の世紀」「生命科学の世紀」「ゲノムの時代」と言われる21世紀へ突入しました。日々のニュースは、「脳科学」「ヒトゲノム計画」「臓器移植」「生殖医療」「クローン」「再生医学」などの動向を伝え、われわれ人類と科学技術の倫理的インターフェイスに震動を与え続けています。
MRI(磁気共鳴画像法)やCTスキャン(コンピュータ断層撮影)など先端テクノロジーによる医用画像、遺伝子工学の著しい進展による生殖医療などにおける細胞レベルの実写やCGイメージもまた、テレビやインターネットを通じて目に触れる機会が多くなりました。このような身体へのまなざしの変化は、われわれの生老病死、そして、生命観に大きな影響をもたらしております。
本展は、現代の医学や生命科学のテクノロジーの進展に触発されながら、「医学」をメタファー(隠喩)として社会的な表現を行なうアーティストによって構成されています。
脳科学、解剖学、遺伝子工学、臓器移植、終末期医療など、医学の多様な側面を芸術によって横断する本展は、「隠喩としての医学」を通して、世界を「臨床」的に読む、あるいは、聴く試みと言えましょう。