山野千里は、日々の生活の中で出会う動物や植物、身近に起こった出来事や夢の中の奇妙な記憶といった私的な経験から浮かんでくるイメージを、独特のユーモアと自由な想像力でつなぎ合わせ、粘土や釉薬、絵筆との対話を重ねながら、ウィットとほほえみに満ちた世界を生み出します。緻密でしかも大胆な造形力から作り出される陶作品は、厳密なプランや方向性をあらかじめ設定せずに粘土をつまみ、捻り、削り、付け足すといった即興的な指先の動きによって姿を現します。
形態的な特徴の共通性や、各作品のタイトルに見られる洒落やしりとり・造語といった言葉の遊びによって、ひとつのイメージはもうひとつの思いもよらないイメージを呼び寄せます。飛躍と融合を繰り返しながら豊かに広がる手のひらサイズの小世界では、人間を含め、あらゆる生き物が通常の関係性や区切り、スケールなどから解き放たれ、想像を規制していたそれらの概念を軽やかに超えてゆきます。そして、ユニークな役割をそれぞれに与えられて、ときに親密に関係し合い、ときに渾然一体となりながら生き生きと共存しています。その愛嬌を湛えた表情に誘われ、鑑賞者は彼らの物語の中へと参加してゆくことでしょう。
本展では、陶の立体作品を中心に、絵画作品や、新たに挑戦した絵画の特質をそのまま陶皿に込めた作品を展示します。既成の価値観やしがらみから観る者を解放し、世間のあらゆる縛りを解き放とうとする『ジャングル』を自由に探検しながら、ユーモアとウィットに富んだ、たくさんの物語をお楽しみ下さい。