富本憲吉(1886-1963)、清水卯一(1926-2004)、松井康成(1927-2003)は、東洋のやきものの伝統的な技法をもとに、自己の想いを映し出した独自の作品を、それぞれに生み出しました。
富本は大正時代初期、イギリス人の陶芸家バーナード・リーチ(1887-1979)との交遊がきっかけで作陶を始めました。当時のやきもの作りは、職人による分業生産が主流でした。そのような時代に富本は、白磁や染付、色絵のうつわなどに独自の形や模様を模索し、個人作家としての創作活動の礎を築きました。
清水は戦後間もない頃から、やきものの素地や釉薬を、工房近隣の山の土や石の中に探し求めました。生涯を通じて、素地と釉薬の組み合わせに試行錯誤を重ね、柿のように明るい発色の鉄釉や、複雑な貫入(かんにゅう)が入った青磁釉など、独自の釉薬を掛けたうつわを生み出しました。
松井は1960年頃から、日本や中国の古いやきものを学び始めました。60年代後半以降は、色が異なる土を組み合わせて模様をあらわす、練上手(ねりあげで)のやきものを一貫して作り続けました。鮮やかな色土を轆轤(ろくろ)で成形することで、これまでにない斬新で多種多様な練上手のやきものを生み出しました。
富本の「色絵磁器」(1955年)、清水の「鉄釉陶器」(1985年)、松井の「練上手」(1993年)の技法は、それぞれ重要無形文化財に指定され、彼らはその技によって、いわゆる人間国宝の認定を受けました。
本展では、当館のコレクション248点の中から174点の陶芸作品を厳選し、彼らの創作活動を回顧します。現代陶芸を極めた巨匠たちの、美と技の世界をご堪能いただければ幸いです。