私たちにとって円はもっとも親しまれてきた形のひとつであり、ある1点から等距離の点が連続して集合する現実には存在し得ない存在です。また円が回転してできるドーナツ状の閉じられた曲面を円環と呼びます。始まりも終わりも存在しない2つの形の間で生じる、2次元から3次元への変容。視点を変え思考をめぐらせば、私たちは形から形へとゆるやかに連続する、深遠な変化を認識できるといえるでしょう。
髙橋節郎の作品には大小の円を用いた表現がしばしば見られます。髙橋は周囲に満ちる様々な移ろいを、円弧を用いて捉えようとしたのかもしれません。本展では髙橋作品に併せて、豊田市美術館所蔵の国内外作家による円や弧、もしくは反復や変容をイメージさせる作品約40点を展示します。
円環的時間観のもとに存在する連続や集合、表層と境界、死と再生など、作品に内在する連綿と繰り返される相互作用を見出していただければ幸いです。