桑山忠明(1932-)は、1958年に渡米後、ニューヨークを拠点に現在まで第一線で創作活動を行っています。
1960年代のミニマリズムの台頭に呼応しながら、モノクロームの幾何学的形体を組み合わせた平面作品で評価を確立した桑山は、1990年代以降、ベークライトやアルミニウムといった無機的な工業素材を用いた複数のパネルや立体物を規則的な反復によって配置し、展示空間全体を芸術の場に変容するインスタレーションへと、作品の規模を拡大してきました。その空間は、メタリックな色彩が放つ静謐な光とともに、芸術の新たな境界を追究する実験性に満ちあふれています。
作家のコンセプトを具現化する展示プランに基づいてインスタレーションを制作する一連のプロジェクトは、1995年のドイツ・ロイトリンゲンでの個展を皮切りに、世界各国で展開されてきました。日本では、2010年の名古屋市美術館、2011年の金沢21世紀美術館、国立国際美術館での個展が記憶に新しいところです。
今回の個展では、海と山に囲まれた自然環境に立地する葉山館の5つの展示室が、それぞれの空間スケールに基づいて桑山忠明が新規制作したインスタレーション作品となります。チタンによる新作や日本初公開の作品を含めて実現されるこのプロジェクトは、展示室に足を踏み入れた瞬間から、いまだ経験されたことのない芸術としての空間体験を来訪者に開くことでしょう。
半世紀を越えて続けられる桑山忠明の芸術探求、その最新の形を紹介する待望の展覧会です。