大衆の人気を集める歌舞伎役者を描いた役者絵は、浮世絵の最も重要なジャンルの一つです。江戸庶民にとって憧れの役者の似顔絵は、現代でいえばアイドルスターのブロマイドのようなものでした。芝居に取材したもの、芝居の役柄に人気役者を当てはめた見立絵、楽屋や稽古中の素顔を描いたもの、追善のため出版される死絵など、ファンの心を掴むさまざまな種類の役者絵が作られました。定番の大首絵から、一枚でも繋げてワイド画面でも楽しめる続物、いろいろな趣向を凝らした揃物など、思わず手に取りたくなるような多様な工夫がされています。さらに、人々は日々の生活の中で、夏の粋な装いの必需品である団扇(うちわ)に貼りつけた団扇絵、切って組み立てて遊ぶ「組上絵」や、双六(すごろく)といったおもちゃ絵など、いわゆる役者絵グッズを楽しんでいました。
このたびの展覧会では、館蔵品より、歌川国芳、三代歌川豊国、豊原国周らの江戸後期から明治時代にかけてのバラエティ豊かな役者絵を展示します。あわせて、「南総里見八犬伝」や「切られ与三郎」、「天保水滸伝」など、房総ゆかりの物語に登場するヒーローたちを紹介します。
大人から子どもまでを夢中にさせた役者絵の数々をどうぞお楽しみください。