1945年山形県に生まれた鬼海弘雄は大学で哲学を修めた後、トラック運転手、マグロ漁船の乗組員などさまざまな職業を転々とする中、アメリカの写真家ダイアン・アーバスの、人間の核へ肉薄した作品に大きな衝撃を受け、写真家として身を立てる決意をします。以来、現在まで写真表現をひたすら追及することに身を投じ、土門拳賞他数々の賞を受賞しています。
本展では、強烈な存在感と詩情をあわせもつ人々を40年以上にわたって撮り続けている『PERSONA』、人の営みの匂いを写し出す町のポートレイト『東京迷路』、『東京夢譚』のシリーズにくわえ、鬼海弘雄のもうひとつのライフワークである『インディア』と『アナトリア』から、厳選したモノクロ作品約200点を一堂に展示します。
写真にしか表現できない「ちから」とは何か、という問いかけに真っ向から取り組み、人間という摩訶不思議な生き物に対する尽きない好奇心と愛情が注ぎ込まれた作品群は、普遍的な「人間」の姿の迫力と美しさで観る者を圧倒します。
鬼海弘雄の関西で初の大規模な集成展となる本展は、人間存在の根源に迫る写真家・鬼海弘雄の全貌に触れる貴重な機会です。