昭和55年に尾道市立美術館が開館して以来、尾道市ゆかりの作家として所蔵コレクションの中核を担ったのが、洋画家の小林和作〔明治21(1888)年-昭和49(1974)年〕と日本画家の森谷南人子〔明治22(1889)年-昭和56(1981)年〕です。
二人の画家は、風景画家として独自の画風を確立した作家です。年齢も近く、同じ京都で日本画を学び、当時から自然の描写に主眼をおきました。しかし、美しい自然を求めた先の到達点は違うものでした。小林和作は、山や海など自然そのものの美しさを追い求めました。一方で、森谷南人子は、農村など人々が自然と共存した風景に美を見出そうとしました。
小林和作は東京から、森谷南人子は京都から郷里の笠岡を経て尾道に移住してきました。風光明媚な尾道という場所が、何らかの啓示を与えたのでしょうか。二人の画家は、尾道に住み始めてから後に画境を切り開いています。
本展は、尾道市立美術館が所蔵するコレクションから、風景画を中心に小林和作の油彩と水彩画、森谷南人子の日本画と水彩画を展覧します。あわせて、平成21年度に開催した「風航路 早川義孝展」で取り上げた洋画家、早川義孝氏が逝去したことに伴い追悼の意を込め、尾道を題材にして描いた作品を展覧します。