郡山市立美術館の開館20周年を記念して、「バーン=ジョーンズ展」を開催いたします。本展は、当館の所蔵作家を代表するイギリス人画家、バーン=ジョーンズ(1833―1898)の全貌に迫る大規模な展覧会です。
19世紀後半のヴィクトリア朝時代に一世を風靡したバーン=ジョーンズは、絵画や装飾工芸の分野において独自の世界を切り拓きました。バーン=ジョーンズの作品は、その多くが古代神話や中世文学から想を得ており、優美で神秘的な雰囲気を湛えています。当時「世界の工場」であったイギリスでは、急速な経済発達の陰で環境汚染や貧富の差の拡大など、現代にも重なる様々な問題が生じていました。そうした中で、バーン=ジョーンズは象徴性に満ちた画風を追い求める一方、社会と美術の関わりにも着目し、室内装飾や書物のデザインに力を注いでいます。バーン=ジョーンズの業績は、ヨーロッパをはじめとする19世紀末の芸術思潮に大きな影響を及ぼしました。日本の明治期を代表する画家、青木繁もバーン=ジョーンズのロマンティックな作風に深く感化されたひとりです。
本展では、バーン=ジョーンズによる代表作の数々が国内外から出品されます。日本初公開となる「ピグマリオン」シリーズや《眠り姫》などの絵画作品、壁画やタペストリー、『チョーサー著作集』をはじめとするケルムスコット版の貴重書など、厳選された75作品です。そして、本展には郡山市立美術館のコレクションを代表する《フローラ》と《アヴァロンにおけるアーサー王の眠り》が出品されています。これら二点は東京の三菱一号館美術館から兵庫県立美術館へ巡回し、この秋当館へ帰ってきます。「バーン=ジョーンズ展」という空間において、常設展示とはまた別の雰囲気でそれぞれの作品をご堪能いただけると思います。《フローラ》をデザインした展覧会グッズにもどうぞご期待ください。
(永山多貴子)