このたび武蔵野美術大学 美術館・図書館では、長年にわたり本学の教育・研究に携わってきた油絵学科教授 斎藤國靖教授の退任記念展を開催いたします。
斎藤氏は1942年に栃木県に生まれ、1962年より自由美術協会展へ継続的に作品を発表し、1984年には靉光賞を受賞。紀伊國屋画廊を中心に数多くの個展を開催しています。1980年、イタリアへ留学後は古典絵画の研究に携わり、イタリアテンペラ技法、ヴェネツィア派油彩技法およびその後の技法研究に研鑽を積むと共に、留学中にも多くの展覧会へ出展しています。そして2002年に武蔵野美術大学油絵学科教授に着任後は、学生にヨーロッパの古典技法を模写を通して学ばせ、その技法を現代における絵画表現に発展させるべく、後進の育成に尽力してきました。これらの研究成果は「カラヴァッジョ・闇のなりたち」「絵画技法と色面境界の変遷及び油性テンペラについての一試論」「ティッツィアーノとレンブラントの模写による技法研究」「テンペラ・グラッサについて」等の論文にまとめられ、本学の研究紀要に発表しています。
本展では、初期作品から今回のために制作された新作まで、自選作品約40点を4つのセクションに分けて展示します。ほとんどの作品は、斎藤氏が研究してきた複数の古典技法と色面描画手法を同時に用いて描かれています。そして画面上にはモチーフやモデルが重層的に描かれ、作家独特の“複眼的な世界”が広がっています。異なる絵画技法を同一画面上で相対化・関連化させることが可能かということを追い求めてきた斎藤氏の画業を一望できることでしょう。さらには、絵画技法研究に関する業績を紹介し、あわせて本学にて長年教鞭を執ってきた教育成果の一端もご紹介いたします。
作家であり研究者、教育者である斎藤氏の絵画とその技法研究に向けた探究の軌跡をご堪能いただく機会となるでしょう。