小田宏子は1980年頃から一貫して素材としての「紙」の持つ可能性にこだわりをみせながら制作活動を展開している倉敷市在住の作家です。
氏が創り出す作品は、どことなく丸みを帯び、柔らかく、温かみを感じさせてくれる“癒しのカタチ”。それはあたかも出来たての餅の肌を連想させ、いずれも同じサイズのものでありながら、表面の凹凸によって全て表情が異なります。展示された乳白色の諸作は、ギャラリーの白い壁面空間の中であたかも擬態する生き物のように溶け込みながらも、見る角度によって表情を変容させて存在感を主張します。居心地の良い緊張感と解放感を伴いながら絶妙な表情を見せてくれる作品は、見る人を優しく迎え包み込んでくれるようなインスタレーション作品です。
本展は、日々の制作活動の中で蓄積してきた数百個にも及ぶ紙の新作を規則的と不規則的に配列展示することで、小田の持つ独特の作品世界を余すことなく伝える展覧会となっています。