タカ・イシイギャラリーフォトグラフィー/フィルムは、10月20日(土)から12月1日(土)まで、田原桂一個展を開催いたします。本展では、そのキャリアの初期において大きな注目を浴びた2つの重要な作品シリーズ「窓」と「エクラ」から、それぞれ10数点ずつのヴィンテージ作品を展示予定です。なお、本展は会期を2つに分け、前期(10月20日-11月10日)では「窓」を、後期(11月17日-12月1日)では「エクラ」を展示いたします。
田原桂一の作品は、いかなる表現方法を取ろうともそれが光と影という表現手段となって再構築されることを常に前提としている。・・・常に、推移、変遷そして抑揚に終始する。内と外。白と黒。自然と文化。田原の内向的な面と外向的な面は相反するものではない。いかに内向的かとは長年にわたり「窓」を、そして「エクラ」で住いの内空間を凝視し続け、撮り続けたことから明らかである。また同時に外向的でもあることは、「世紀末建築」という、建築というより空間を撮った膨大な6巻本をヨーロッパ中を駆け巡って作り上げたことから頷ける。どれもが決して拮抗したり相対するものではなく、それぞれの延長上に構築されてゆくのである。・・・田原の写真行為から生みだされるフラクタルで、無数の亀裂の持つ重要性は、或る種の解釈の手続きを空疎なものにし、解釈を無限に反復させ、新しい意味のラインと新しい指示対象の宇宙を備えた、新しい実存的な静態を分泌させることにあるのである。
フェリックス・ガタリ「田原圭一 光の策謀」より抜粋
田原は、写真にとどまらず、彫刻や多様なインスタレーション、都市計画の一環として発表される光を使用した壮大なライトスケープなど、様々な領域を横断しつつ制作活動を続けています。それらの作品の根底には、光の形態そのものを探索するという田原の制作指針とともに、光と影に対する繊細ながらも力強い感性が常に存在しており、今回展示される「窓」と「エクラ」という初期の作品である両シリーズにも、既にそうした特徴を見出すことができます。
田原桂一は1951年京都生まれ。1972年の渡仏後に写真の制作を始め、「都市」(1973-74年)や「窓」(1973-80年)といった作品シリーズを制作。77年にはアルル国際写真フェスティバル(フランス)にて大賞を受賞します。以降、「顔貌」(1978-87年)、「エクラ」(1979-1983年)の制作や、ヨーロッパ全土を巡り19世紀末を主題に建築空間を撮影、様々な写真作品を発表します。また、80年代後半以降は世界各国で光を使用したプロジェクトを展開し、その作品は美術館に留まらず様々な場所で常設展示されています。