今回、二の丸美術館秋の展示は「装身具の美」。装身具とは身を装うもの、つまりアクセサリーとも解釈できますが、こちらで言う装身具とは、主に江戸・明治・大正期に人気を博した細密小物を示します。
例えば、表紙の四角い箱、これ何だと思われますか。実は、明治時代の紙巻きたばこ入れ、通称シガレットケースです。紙巻きたばこが普及し始めた明治初期に携帯用ケースとして作られたものです。手中に納まってしまう程の小さなサイズですが(写真はほぼ原寸大)、そこには限りない職人技と人々の豊かな美意識が凝縮されています。このような時代特有の美意識が盛り込まれた作品は、その他にもまだまだたくさんあります。江戸の粋なたばこ入れやきせる、武士の誇りである印籠、女性を彩る華やかな髪飾りなど、装身具と称されるもの数限りなく、その人気の程が窺えます。今回は、このような小さな細密装身具にスポットを当てた展覧会です。これらは単に小さいだけでなく、より精巧で繊細緻密であり、さらに品格と優美さが求められました。日本人が見出し、長い年月育んできた小さな美の世界をお楽しみ下さい。