道具展は、今まで「暮ラシカル道具展」と称してきました。今回から「ていねいな暮らしと道具展」という名称にかえて展示します。これは、2009年に開催した企画展「ていねいな暮らしのあったころ―佐野一彦が撮った伊深の里山―展」にちなんで名付けました。
道具展は、かつての暮らしの道具から当時の人々の知恵と工夫を知るというものです。
今から50年ほど前までの美濃加茂では、電気で動く冷蔵庫や洗濯機の普及はまだ多くなく、映画や旅行といった娯楽もわずかでした。日々の生活は自給自足が基本で、父親や母親は田畑を耕し、家事におわれ、朝から晩まで働きました。その営みのほとんどが人の力で行わなければならず、そんな苦労の中に工夫や知恵が生まれました。
やがて私たちの生活は、急速な社会変化の流れの中で、大きく様変わりしました。しかし振り返ると、昭和30年代から40年代の暮らしの中には現代において失いつつある大事なものがありました。それらを見つめなおす意味を込めて、当時の暮らしを「ていねいな暮らし」と名づけました。
当展では、自然との共存、家族や地域のつながりなど、忘れてはならないものを次世代に伝えていけたらと思います。そしてひとつの資料から新しい見方、その背景、地域の問題や現代の課題を提示する場となればと思います。