美濃加茂市民ミュージアムでは「芸術と自然」をテーマに、現代美術を紹介し展覧会を開催するとともに、滞在制作やワークショップを通じてアートに身近に触れ合う場を提供してきました。今年度は大阪府枚方市出身の作家・押江千衣子(1969年~)を紹介します。
京都市立芸術大学で油絵を学んだ作家は、90年代にはヨウシュヤマゴボウや彼岸花など植物をモチーフとした絵画を多く手がけました。近年ではフランスやベルギー、和歌山県の熊野など、訪れた地で出会った風景画を制作しています。画廊や美術館を中心に作品発表を重ね次々に新しい展開を見せる押江千衣子は、今後の活躍がますます期待されるアーティストです。
作家はオイルパステルを画材として用い、指でキャンバスに伸ばしながら描いていきます。生きている植物の伸びやかなかたちを捉え、内からにじみ出るような豊かな色を表します。水を湛え呼吸する葉、鮮やかな色を放つ花々。作家の手により、みずみずしいひとつひとつの存在が大きく広がります。
美濃加茂市民ミュージアムは、豊かな森に囲まれた環境の中に建っています。昨年4月に出産した作家は、この展覧会のために5月半ばから1歳になる娘とともに美濃加茂市に住所を移しました。9月初旬までの間、当館の宿泊アトリエ棟に滞在し、子育てを続けながらミュージアムの森を題材とする絵画の制作に取り組みます。展覧会ではこの滞在制作による新作を発表し、併せて1993年から2012年までの20年間に描かれた作品を展示いたします。
この場所でうまれる絵画から、押江千衣子の繊細かつ鋭敏な感性が見出す森の息づかいを感じ取っていただければ幸いです。