小野佐世男(1905-54)は、モボ・モガが銀座を闊歩した1930年代から、戦後にかけて活躍した画家・漫画家でした。東京美術学校(現東京藝術大学)西洋画科に在学中から芸術性の高い雑誌『東京パック』などに、西洋風のハツラツとした女性像を発表し続け、一躍、人気者となりました。小野が描く女性像には、関東大震災(1923)から復興し、立ち上がろうとする人々への応援と、第二次大戦へと突き進んでいこうとする日本への風刺とが描かれています。
小野は、岡本太郎の父で漫画家の岡本一平(1886-1948)や、太郎の叔父にあたる画家の池部釣(1886-1969)とも交流があり、頻繁に池部宅を訪問していたことを、長男で俳優の池部良はエッセイ集の中で述べています。
小野は、1943年3月、複数の文化人たちと共に陸軍宣伝班としてジャワ(現インドネシア)に派遣され終戦まで駐留しました。1943年にはジャワの人びとの啓蒙活動の一環として啓民文化指導所が開設され、小野は現地の人びとと親しく交流し、近代的な絵画技法を教授したといわれています。
小野は、ジャワでの日々を総括する意味で、1945年、『小野佐世男ジャワ従軍画譜』を現地で刊行しています。今回、その原画を初公開致します。
戦後、捕虜生活を経て復員した小野は人気漫画家として活躍し、本格的に油彩制作を再開し始めて間もない1954年、来日したマリリン・モンローを取材する途上に立ち寄った日劇ミュージックホールで倒れ、49歳の誕生日を目前に急逝しました。
生涯を通して、小野は、時代の風に関わりなく、飄々と闊達に生きていくことの大切さを、モガとしての女性像に仮託して描き続けたように思われます。
本展では、小野佐世男の作品と活躍を、原画・書籍・雑誌・映像など約500点を通してご紹介致します。