ミケランジェロの時代から近代に至るまで、西洋では彫刻に色づけすることはあまり好まれませんでした。ロダンにとって、彫刻への彩色は、正確な肉付けを邪魔するシミのようなものでしかなかったでしょう。しかし、西洋でも日本でも、神殿や社寺、神仏像に彩色を施すことは古くから行われており、忘れかけられていたその事実は、近代になると考古学的発見として広く知られるようになります。
近代の日本において、彩色彫刻の美意識を再び世に問うたのは、長い伝統を背景に新しい可能性を追求した木彫家たちでした。彫刻全体を包む華やかな色彩には、形と色の双方に、持ちつ持たれつの相互作用がみうけられます。さらに現代に生きる彫刻家たちは、自らの表現世界の実現のために、色を欠かせない要素として取り込んでいます。
本展では近現代彫刻の色に注目し、彫刻の特性と表現の多様性を紹介します。