今井兼次は、早稲田大学図書館をはじめ東京地下鉄道銀座線(上野―浅草間各駅)、岸田國士山荘、多摩帝国美術学校、日本中学校、航空記念碑、カトリック成城教会聖堂、跣足男子カルメル会修道院聖堂、日本26聖人殉教記念施設など優れた建築作品を設計、我が国のモダニズム建築の流れからは離れたところで独自の内面的な世界を築いた建築家であり、エストベリ、ガウディ、シュタイナーらをいち早く日本に紹介したことでも知られています。また早稲田大学、日本美術学校、帝国美術学校(現武蔵野美術大学)、多摩帝国美術学校(多摩美術大学の前身)、多摩美術大学、関東学院大学、浅野学園(現浅野工学専門学校)、文化学院などで教鞭をとり、教育者としても大きな足跡を残しました。
多摩美術大学美術館では今井兼次共同研究会を中心にして、すでに2005年の「建築家 今井兼次の世界」と2007年の「建築家 今井兼次の世界Ⅱ―初期作品から航空記念碑まで―」、2009年の「建築家 今井兼次の世界Ⅲ―祈りの造形―」を開催しました。
それらに続く第4弾の多摩美術大学今井兼次共同研究会の成果を示す展覧会として、今回は、今井兼次の戦後の公共建築を中心とした作品に関する設計図面、エスキース、スケッチ、模型などを展示します。今井兼次の第二次大戦後の作品の中から、ユネスコ村、碌山美術館、東洋女子短期大学(現東洋学園大学)モザイク、糸車の幻想モザイク、大多喜町役場庁舎、大室高原ヘルスホテル設計案、桃華楽堂(香淳皇后還暦記念ホール)、大隈記念館、遠山美術館など、教会建築と同時並行で創られた公共建築の中に、建築を通しての今井兼次の「社会への奉仕」を見ることができます。
本展覧会の開催を通じて、今井兼次の世界がより多くの方々に理解されることを願っております。