生まれ故郷の会津の四季を木版画で表現した作品で広く知られる版画家斎藤清。その会津の四季の版画作品制作当初の動機は、幼くして失った故郷と母親の遠い記憶を呼び覚ますためのものだったと斎藤自身も否定はしていません。しかしそれは、きっかけでしかなく、以降晩年まで描き続けられたそれらの作品は、あくまでも『絵としての造形性の探究と画家である自分自身との闘いでありました。とはいえ、作品は作家の手を離れれば一人歩きしてしまいます。作家が作品に込めた思想や真意、意図は強制できるものではなく、ある程度は私達見るものに委ねられます。斎藤が描いた移ろいゆく会津の景色に対し、私達が無意識に感じるものは画家の苦悩ではなく、やはり郷愁やぬくもりといった温かい私達それぞれの茶褐色の想い出なのかも知れません。
今展では「斎藤清 会津懐郷」と題し、ふるさと会津をモチーフとした作品を中心に展示いたします。