ハンガリーの映画監督であるコーシャ・フェレンツは、映画界の重鎮である。脚本家としても名声を博し、また写真家としても次第に頭角を現す。氏は自身の活動について、次のように語っている。「半世紀以上にわたり、自分の思いや生きている証を、映画だけでなく写真でも表現してきました。映画とは違い、写真は過ぎ去る一瞬と悠久の狭間にあります。私は、この小さく儚い世界に広がる、無限の一瞬を見出すことにより、広がる時間と空間を同時に表現しようとしたのです。私の映画では人間に焦点を当てています。その中でも特に、人として生きる事の責任や哀しみ、理不尽で矛盾だらけの社会、そして人の可能性について描いてきましたが、写真の主役は自然との対話です。様々な一瞬と永遠が、同時に存在している多次元と、我々人間との関わりに焦点を当てました。」
コーシャの作品は、素朴な魅力でこの新しい調和を目指している。写真の題材は多種多様だが、その全ての根源は変わらない。素朴で単純だからこそ、世界への敬愛のメッセージがより輝きを増しながら、力強く発せられている。
彼のルーツはハンガリーだけではない。日本を第二の故郷とし、親日家としても知られる彼は、独自の観点で日本を捉えてきた。2002年、天皇皇后両陛下のハンガリー公式訪問に合わせ、ブダペストの国立ギャラリーで開催された同氏の写真展は、独特の作風で日本への想いを綴り、両国の相互理解をよりいっそう深める結果となった。
日本で展示される本写真展の作品群は、大きく三つに分けられる。まず、ハンガリーを始めとする欧州で撮られたもの。そして、日本のもの。最後に、アジア、アフリカやアメリカなど、世界各地の印象を集約したもの。
時と空間の広がりを、コーシャ・フェレンツの眼でご堪能ください。