東山魁夷は、清澄で深い情感をたたえた風景画により、戦後の日本画の世界に大きな足跡を残しました。自然と真摯に向き合い、思索を重ねながらつくり上げたその芸術世界は、日本人の自然観や心情までも反映した普遍性を有するものとして高く評価されています。
1908(明治41)年、横浜に生まれた東山魁夷は、1933(昭和8)年、東京美術学校日本画科研究科を修了しました。ドイツ留学の後、太平洋戦争への応召、肉親の相次ぐ死といった試練に見舞われますが、そうした苦難の時期を経て風景の美しさに開眼し、戦後はおもに日展を舞台に《残照》、《青響》といった風景画の名作を数多く発表しました。
この展覧会では、昭和戦前期の作品から晩年に至るまでの代表作の数々によって、戦後の日本を代表する国民的画家と謳われた東山魁夷の画業を回顧します。生涯にわたり創作の源泉となった北国の風景やイメージなどの創造の背景をさまざまな側面からさぐり、東山芸術の精髄をご紹介いたします。