日本画壇を代表する東山魁夷画伯は明治14年(1908)横浜に生まれ東京美術学校研究科を終了後、昭和8年(1933)ドイツに留学します。画伯が留学で感じ取った北欧的な精神性は東山芸術の基盤となり、その後1960年代に北欧やドイツ、オーストリアを訪れた東山画伯は、戦前と変わらない古い街の佇まいや清澄な自然の中に高度成長の最中にあった日本に失われつつある懐かしい風景を見出します。
このたびの展覧会では東山画伯の静かで、清らかに澄んだ感覚によってとらえられた欧州の風景と、作家の心の祈りを表す白馬のいる風景を展示します。東山画伯によって描かれた欧州の風景は極めて日本的な自然観に根差しているにもかかわらず、民族的、文化的差異を超えて人々の心の奥深い部分に直接的に働きかけており日本人だけでなく世界中の人々に感動を与え、愛され続けています。東山画伯の風景画の中にある誰もが持つ魂のふるさとを本展覧会を通して感じていただけたら幸いです。