昨年度、県出身の陶芸家齋藤三郎の遺族より60点の寄贈を受けました。齋藤三郎は、大正2年栃尾町(現栃尾市)に生まれ、若くして近藤悠三、富本憲吉の二人の人間国宝から陶芸を学んだ後、独立して作陶を始めましたが 間もなく出征。復員後兄を頼って 越後高田(現上越市)に窯を築き、昭和56年に68歳で亡くなるまで 白磁、色絵、染付など幅広い技法を使い数多くの作品を生み出しました。特に白磁の壷や身近にある雪椿、蔬菜などを題材にした親しみやすい絵付の花瓶や湯呑みなどは 高田を始めとする多くの人々に愛され使われてきました。また疎開してきた文学の堀口大学、小田嶽夫、写真の濱谷浩、彫刻家戸張幸男との親交、会津八一や醗酵学の坂口謹一郎をはじめとする多くの文化人との交流は上越・高田地方の文化振興に大きく貢献しました。
本展では、寄贈された全作品により齋藤三郎の陶芸の全体像を紹介し、また収蔵している県出身の工芸作家の作品を一堂に展示いたします。この機会に新潟の工芸に親しんでいただきたいと願っております。