太平洋戦争中、「交換船」とよばれる船が存在したことをご存知でしょうか。当時、全ての商船は国家の統制下におかれていました。かつて華々しく航海した客船は軍に徴用され、なかには航空母艦へと改造されるものもありました。この戦争の最中、一時軍事徴用を解かれ、歴史的航海の大役を果たしたのが「交換船」です。
「交換船」とは、戦時国際法により、「敵国」に残された人々を中立国の港で交換し合った船で、その重責を伴う運航は、海運会社日本郵船に託されました。開戦時、それぞれの相手国には外交官をはじめ、ジャーナリスト、学者等多くの自国の人々が暮らしていました。「交換船」はわずかな中立国を頼りに、国交が断絶する相手国から彼らを安全にそれぞれの自国に帰すという、困難極める歴史的航海を行ったのです。
本展では、「交換船」を中心に、商船が戦争に巻き込まれていった時代背景をご紹介します。本展を通じて戦後日本で活躍する多くの知識人たちが、この「交換船」に乗船していたという興味深い事実とともに、船会社が戦争という困難な時代に、懸命に果たした人道的支援の一端をご覧いただければ幸いです。