地域にゆかりの深い作家を紹介してきた茅野市美術館では、画家・小堀四郎(1902-1998)の生誕110年を記念した展覧会を開催します。
小堀四郎は、1902年、愛知県名古屋市に漢学者・小堀休忠の四男として生まれました。愛知県立第一中学校(現愛知県立旭丘高等学校)在学中に油彩を知った小堀は、生涯芸術の道に進むことを決意し、父より東京美術学校(現東京芸術大学)への進学の許しを得ます。上京後、藤島武二に師事し、1922年に同校へ入学。同期には猪熊弦一郎、牛島憲之、荻須高徳、小磯良平、山口長男ら、のちの日本洋画壇を担う実力者が揃っていました。卒業後、1928年よりフランスに留学。ルーヴル美術館での精力的な模写に加え、ヨーロッパの主要都市を巡り、多くの美術作品に触れるなど、研鑚の日々を過ごし、1933年に帰国しました。翌年、藤島武二の媒酌で森鷗外の次女・杏奴と結婚。杏奴は、生涯、最大の理解者として画業に専念する小堀を支えました。1935年、帝展改組による画壇の混乱の中、様々な団体から誘いを受けた小堀は、師である藤島から、「君が真に芸術の道を志すならば、出来得ればどこにも関係するな。芸術は人なり」「俗世に求めている間は人間は出来るものではない」との助言を受け、生涯画壇に属さず、画商との交渉もせず、出品を東京美術学校同期生による「上杜会」のみとし、自身の信じた芸術の道を歩み続けます。
本展では、初期から渡欧時代の作品、家族で疎開した茅野市・蓼科に戦後10年間一人残り、蓼科の美しく雄大な自然を感受し生みだされた作品、北陸と東北での民間信仰や風習の取材から生まれた作品、さらにイラクとイランへの旅以降に制作され、自然や生命の神秘を描いた作品まで、約115点を展示します。厳選された作品群を通して、画家・小堀四郎の画業を回顧するとともに、時を越え静かにたたずむ美をみつめます。