18世紀フランスの画家、ユベール・ロベール(1733-1808)は、21歳でイタリアに留学し、帰国後はパリを中心に精力的に活動しました。11年に及ぶながいイタリア留学中に、古代の神殿や凱旋門、ルネサンスやバロックの大建築やモニュメントを、自由に組み合わせて描く手法を習得し、現実と空想の狭間に立つ空想的風景画を創出しました。その一方で、自然のありさまや人々の営みをサンギーヌ(赤チョーク)で繰り返し活写しました。
帰国後の数十年は、王政末期からフランス革命へとむかう激動期でした。この間のロベールの活動は、多岐にわたっています。パリのサロンに廃墟画を多数出品し、「廃墟のロベール」と呼ばれただけでなく、「国王の庭園デザイナー」として庭園の設計にも関わりました。さらに、ルーヴル美術館の創設にも、ロベールは一役かっていました。
このたびの展覧会は、ロベールの素描コレクションで世界的に知られる南フランスのヴァランス美術館の全面的な協力のもとに実現しました。出品点数は、ロベール自身の作品に、クロード・ロラン、フラゴナール、ピラネージなど、17,18世紀の作品を加えた約130点です。本展は、ロベール芸術の魅力を日本で初めて紹介する待望の展覧会であると同時に、18世紀フランス美術をご堪能いただける貴重な機会です。古代への夢想と枯渇を知らない創意が織り成す絵画世界を、県立美術館で心ゆくまでお楽しみください。