久保田一竹氏は、1917(大正6)年、東京神田に生まれました。染物屋が建ち並ぶ神田の町で育った久保田氏は、少年時代から染物に興味を抱き、10代で染物師に弟子入りして友禅や日本画を学んだ後、弱冠19歳で染め物工房を開きました。その後、桃山時代の辻が花染の古裂に出会い、これに強く惹かれます。染め物の仕事のかたわら、長い年月をかけて研究に研究を重ねた末、59歳にして初めて独自の辻が花作品を完成させ、以来25年をへた今日まで、「一竹辻が花」として次々と作品を発表し、その作品は日本のみならず世界でも高い評価を受けています。
本展では久保田氏が2大ライフワークとして取り組んでいる「富士山」「光響」に焦点を当てて展覧します。久保田氏は赤富士に魅せられ10年以上も富士を題材にした作品を制作しており、1994年には河口湖畔の富士を望む地に久保田一竹美術館が開館されました。また「光響」は四季及び宇宙を80点の連作で表現しようというものです。このほか独自の能装束など絢爛豪華な作品42点を展示します。