小村雪岱(こむらせったい)(1887~1940)は、大正から昭和初期にかけて活躍した日本画家です。
明治20年埼玉県川越に生まれ、東京美術学校(現東京藝術大学)で下村観山に学びました。卒業後は古画模写に従事し伝統絵画を学びつつ、資生堂意匠部に勤め、ロゴマークやパッケージのデザインの仕事に関わりました。
雪岱が画才を発揮したのは、装幀や挿絵の世界でした。泉鏡花の著書『日本橋』の装幀を手掛けたところ評判となり、以降、多くの新聞や雑誌、小説を飾り、さらには歌舞伎や新劇の舞台装置、映画の美術考証にもたずさわりました。
とりわけ雪岱の作品が賞賛されたのは女性表現でした。余白をいかした簡潔な構図の中に、細くたおやかな線で女性をとらえました。繊細可憐なうちにほのかな色香をたたえた姿は、江戸中期の浮世絵師・鈴木春信になぞらえて「昭和の春信」と称され、竹久夢二や鏑木清方とともに人気を博しましたが、昭和15年54歳で急逝しました。
このたび、京都・清水三年坂美術館コレクションから、肉筆画、版画、挿絵や舞台装置の原画、装幀本など、約100点を紹介します。再評価の動きが高まりつつある今、初公開を多数含む作品を通して、まだ知られざる雪岱美人の世界をご覧いただきたいと思います。