当館の「吉澤コレクション」寄贈者の一人、三代吉澤兵左氏(1926~2011)は、故郷下館(現・茨城県筑西市)出身で近代陶芸の最高峰・板谷波山(1872~1963)の作品と人柄に接したことから蒐集を始めました。実父が下館における波山の支援組織・寿峰会の中心者であった縁で、波山に直接制作を依頼することもありました。波山没後も作品との出逢いに恵まれ、美しい発色の彩磁作品、彫りと造形の冴える単色釉作品、瑞々しい晩年の彩磁茶碗など、円熟期以降を中心とするコレクションを築きました。吉澤氏の蒐集は他の陶芸家・現代日本画・洋画に及びましたが、波山の峻厳かつ清らかな造形が氏の美の基準となったことを感じさせます。
この展覧会では、板谷波山約30点(初公開作品含む)など計約60点を展示します。吉澤コレクションの陶芸の概要を一堂にご覧いただけるのは開館10周年にして初めての機会となります。会期中の10月10日に50回忌を迎えるこの時期、改めて波山の魅力に触れていただければ幸いです。