神戸市出身の小磯良平(1903-1988)は、日本の近代洋画界を代表する画家の一人です。
本年は、小磯の業績を顕彰して建設した神戸市立小磯記念美術館の開館20周年にあたり、翌年の2013(平成25)年は、小磯良平の生誕110年を迎える年にあたります。これを記念して、代表的な油彩画作品を始め、素描や版画、挿絵等の作品を一堂に会する展覧会「小磯良平の世界」を開催いたします。
東京美術学校在学中に、帝展に出品した《T嬢の像》が特選の栄誉に輝いた時から広く注目を集めた小磯良平。優美なコスチュームをまとった室内の女性像をモチーフとした作品は、穏やかで洗練された美しさを追求し続けた「小磯良平の世界」そのものです。小磯は、美術学校を卒業した翌年の1928(昭和3)年から1930(昭和5)年にかけてヨーロッパに遊学し、各地の主要美術館で西洋絵画を実見して多くを学んで帰国、その後およそ60年間の制作活動の中、西洋絵画の伝統を常に意識しながらさまざまな表現の可能性を追及しました。正確なデッサンから生み出された作品は、人物画だけではなく静物画や風景画、挿絵、版画など、多岐にわたる表現においても人々を魅了してきました。
生誕110年を迎えようとする今、あらためて小磯良平の画業を振り返ることで、世代の異なる現代の人々に小磯作品の魅力を伝え、小磯芸術を育んだ、神戸という都市についても関心を持っていただければと考えます。