須田国太郎(1891-1961)は京都帝国大学で美学美術史を専攻し、並行して関西美術院でデッサンを学びました。その後スペインに留学してプラド美術館などでルネサンス以降の伝統絵画を模写し、同時にヨーロッパ各地で新旧の美術を見てまわります。
パリで最新の美術を摂取した日本人画家の作品を、須田は切り花に喩えましたが、自身は花だけでなく、根や幹ともいうべき西洋絵画の歴史と技法を注視していました。そしてそれらが日本に根をおろし、生長して日本固有の油彩画となることを目指したのです。
やがて到達したのは、黒を基調とした重厚な色彩による独特の画風でした。暗く濃密な陰が、あたかもその奥底から見えない光を放っているかのような作品の魅力を、本展では「陰翳、燦燦。」と表現してみました。作品から滲み出る須田の飽くなき探求心、日本人らしい感性や美意識は、いま改めて私たちの心に響いてくるのではないでしょうか。
本展では主要作品約120点により、須田国太郎の深遠な絵画世界を回顧します。