コドモノクニは大正11年(1922)1月に創刊され、終刊の昭和19年3月までの約23年間に287冊が刊行された月刊絵雑誌です。2歳から7歳の子どもと親子を対象にしたビジュアルと文学、音楽性を併せ持った革新的な総合絵雑誌でした。コドモノクニからは詩人北原白秋、野口雨情や作曲家中山晋平らによって数々の童謡の名作が生まれ、挿絵では武井武雄や岡本帰一、清水良雄、初山滋、本田庄太郎、川上四郎、深沢省三、竹久夢二、村山知義らが活躍しました。創刊時に編集長を務めていた鷹見久太郎(1875-1945)は"子ども達に本物を、芸術性高きものを"というコンセプトを掲げ、そのもとに画家、詩人、音楽家が結集し、夢のような絵雑誌が実現したのです。
鷹見は国木田独歩による独歩社を引き継ぎ、明治40年に東京社を創業。独歩社から引き継いだ婦人画報とともに、明治45年には婦人画報の姉妹版である少女画報の創刊を手掛けました。そして大正11年にコドモノクニの創刊を果たします。鷹見は他にも子ども向けの漫画雑誌、子供パックなど女性や子どもを対象とした雑誌に力を入れました。昭和6年にコドモノクニを離れた後、自ら子供の天地社を設立し、コドモノテンチを創刊。コドモノテンチでは、コドモノクニのエッセンスをより色濃く反映させながらも時代に敏感な感覚を発揮しました。
この展覧会ではコドモノクニ、コドモノテンチと関連の原画を中心に約230点を展示し、編集者鷹見久太郎の雑誌作りへの視点を読み解きながら、コドモノクニの魅力にせまります。ビジュアルの斬新さと詩の美しさ、童謡の楽しさがつまったコドモノクニは、時代を経た今でも色褪せず、子どもへ向けられた情熱が伝わってきます。